2025年09月11日
防水シート(ルーフィング)の重要性について 見えない場所こそ屋根の要
目次
見えない場所こそ屋根の要
屋根からの雨漏り――住まいにとって最も避けたいトラブルのひとつです。
その原因の多くが「ルーフィング(防水シート)」にあることをご存じでしょうか。
屋根工事を行う際、お客様が注目されるのは、どうしても「仕上げとして目に見える屋根材」と「工事金額」に偏りがちです。
瓦か金属か、色やデザインはどうか、そして予算はいくらか。
これらは確かに大切な要素ですが、その下に隠れてしまう「ルーフィング」について積極的に質問される方は、実際にはごく少数に限られます。
しかし、屋根の寿命を左右する最大のポイントは、この“見えない存在”であるルーフィングにあるのです。
屋根は二重構造で雨を守る
屋根は大きく分けて二層構造になっています。
- 仕上げ材(瓦、スレート、金属など)
- ルーフィング(防水シート)
外から見えているのは仕上げ材だけですが、実際に「雨水を家に入れない最後の砦」となるのはルーフィングです。
極端な例を挙げれば、屋根材が多少傷んでいても、ルーフィングが健全であれば雨漏りは起きません。それほどルーフィングは重要な役割を担っています。
ところが一度施工が終わってしまうとルーフィングは外から確認することができません。20年、30年と年月が経ち、初めて雨漏りという形でその存在が浮き彫りになります。

ルーフィングの種類と特徴
現在、ルーフィングは大きく二種類に分類されます。
① 紙芯タイプ
芯材が「紙」で作られているもっとも一般的なタイプです。新築住宅で広く使われており、コストが安いのが特徴です。
施工直後は問題ありませんが、年数が経過すると紙が湿気や荷重に耐えられず、破れやすくなってしまう欠点があります。特に屋根の重なり部分や釘が効いている部分から劣化が進み、やがてそこから雨水が侵入してしまいます。
② 不織布タイプ
一方で、不織布を芯材としたタイプもあります。マスクやフィルターのような繊維素材でできており、耐久性に優れています。
引っ張りや曲げに強く、経年劣化しても破れにくいため、長期間にわたり防水性能を発揮します。
しかし、現在市場に流通しているルーフィングの半分以上はいまだに紙芯タイプであり、不織布タイプを採用している現場は少数派です。理由は単純で、施工会社が「安価な方」を選ぶことが多く、施主側もルーフィングにまで関心を持つ方が少ないためです。
雨漏りと費用の現実
実際に私たちが雨漏り調査に伺うと、原因のほとんどがルーフィングの劣化です。屋根材そのものはまだ使える状態でも、内部の防水シートが破れているために雨水が侵入し、天井や壁にシミをつくってしまいます。
この修繕費用は決して安くありません。雨漏り補修や屋根の葺き替えとなれば、200万円から300万円といったまとまった金額が必要になるケースも多々あります。
一方で、工事の段階でルーフィングを「紙芯タイプから不織布タイプへ」グレードアップしても、その費用差はせいぜい10万円前後。将来的に数百万円の修繕を避けられることを考えると、この差は“投資”と言ってよいレベルです。
つまり、ルーフィングに少しこだわるだけで、長期的な安心と大きなコスト削減につながるのです。
なぜ関心が持たれにくいのか
お客様がルーフィングに目を向けない背景には、いくつかの理由があります。
- 完工後は見えなくなってしまう
- 営業担当者自身が十分に理解していない
- 新築直後は雨漏りが起きにくいため、必要性が実感されない
これらの要因から、どうしても屋根材や外観デザインばかりが重視され、防水シートは“見えない存在”として後回しにされがちです。
しかし、20年、30年と時が経つにつれ、この差は歴然と表れてきます。

紙芯ルーフィングを選んだ家と、不織布ルーフィングを選んだ家とでは、メンテナンスコストも住まいの寿命も大きく変わってしまうのです。
まとめ:見えない部分にこそ価値を
屋根工事を検討する際、多くの方が外観や金額に注目されます。もちろんそれも大事ですが、「見えない部分=ルーフィング」にこそ、本当の安心と価値が隠されています。
屋根材は雨を受け止める表層、ルーフィングは最後に家を守る盾。この二重構造の理解を持っていただければ、工事内容の判断基準も大きく変わるはずです。
たった数万円から十数万円の差で、数十年後の暮らしを守ることができます。ぜひ屋根工事を検討される際には、仕上げ材だけでなく「ルーフィング防水シート」にも目を向けていただきたいと思います。

この記事を書いた人
成田 崇
- 瓦ぶき2級技能士
- 瓦屋根工事技士
- 瓦屋根診断技士
【趣味】サーフィン・山登り・バックカントリースキー・読書・旅行
〇かわらぶき2級技能士とは?
瓦屋根工事に必要な知識と施工技術を備えていることを証する資格で、瓦職人にとって欠かせない国家資格です。 試験は学科試験と実技試験で構成されており、実技試験では実際に一文字軒瓦または万十軒瓦を使った瓦葺き作業を行い受験者の施工レベルを審査します。
〇瓦屋根工事技士とは?
国土交通大臣が認定する資格で屋根工事に従事する者として必要な瓦屋根についての適正な知識を備えていることを証する資格です。 この資格取得では屋根の施工に関する知識はもちろんのこと、建築に関わる知識、安全に関する知識、法規等、さまざまな知識が求められます。
〇瓦屋根診断技士とは?
国交省所管の公益法人(社)全日本瓦工事業連盟(全瓦連)が高い技術、技能を持つ工事技術者に対してのみ与える資格です。 この資格の取得条件はかわらぶき技能士と瓦屋根工事技士の両方の資格を備えた者となっており、国内の瓦屋根工事技術者における最上位資格といえます。




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