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スレート屋根に塗装は必要か? ― 屋根塗装不要論|平塚・株式会社いらか|屋根専門

スレート屋根に塗装は必要か? ― 屋根塗装不要論

多くの方が「外壁塗装は10年に1度」という目安を聞いたことがあるのではないでしょうか。

そしてそのタイミングで、
外壁と一緒に「屋根も塗装しておきましょう」と提案を受けるケースが非常に多いのが実情です。

しかし結論から申し上げると、スレート屋根における塗装は基本的に不要です。
むしろ、
無理に塗装をしたことで不具合を招き、
雨漏りに発展してしまった住宅も少なくありません。

ではなぜ「スレート屋根の塗装は不要」と言えるのでしょうか。

スレート屋根とは?

スレート屋根は、
セメントを主成分とした板状の屋根材で、
日本の住宅で最も多く採用されてきた屋根材のひとつです。
軽量で施工がしやすく、
価格も手頃なため普及しました。
代表的なメーカーは ケイミュー(KMEW) で、多くの住宅でその製品が使われています。

見た目は塗装仕上げのため、どうしても「塗装で性能を保つもの」というイメージを持たれがちです。しかし実際にはそうではありません。

メーカーの施工マニュアルが示すこと

スレート屋根の代表的な製造元であるケイミュー社が発行している、
施工業者向けのマニュアルにははっきりとこう書かれています。

  • スレート屋根材に塗装は不要
  • 表面に塗膜があろうとなかろうと、内部に水が浸透することはない

つまり、塗装をしたからといって防水性能が高まるわけではなく、雨漏りを防げるわけでもないのです。
塗装による効用は、
美観の回復や色替えといった「見た目のリフレッシュ」に限られます。

スレート塗装が不要な理由

  1. 防水性が塗装に依存していない
    → スレートはもともと素材自体に雨水が染み込まない構造になっています。
  2. 雨漏り防止には無関係
    → 雨漏りの原因は屋根材ではなく、その下の「ルーフィング(防水シート)」の劣化が大半です。スレートの塗装ではそこを改善できません。
  3. 性能向上にはつながらない
    → 撥水性を期待して塗っても一時的なもので、
    屋根全体の寿命を延ばす効果はありません。

それでも塗装する意味があるケース

スレート屋根の塗装がまったく無意味かと言えば、そうではありません。

  • 店舗や事務所などで外観イメージを一新したい
  • 色あせが気になり、見た目をきれいにしたい
  • 周囲の景観やデザインに合わせたい

こうした「美観上の理由」や「雰囲気を変えるため」の塗装であれば、十分に意味があります。

誤った塗装のリスク

問題は、「塗装すれば屋根が長持ちする」と誤解してしまうことです。

実際に現場では、適切でない塗装が行われたために…

  • スレートの重なり部分が塗料で塞がれてしまい、内部に水が滞留
  • 結果として雨漏りや腐食が発生

という事例が数多く見られます。
塗装自体が悪いのではなく、
「本来不要な場所に、誤った施工をしてしまう」ことが問題なのです。

塗装費用は別の工事に回すべき

スレート屋根の塗装にかかる費用は、一般的に20万~30万円程度。
その金額をもし別の工事に回せたらどうでしょうか。

  • 雨漏りの根本を防ぐ「谷板金」の交換
  • 劣化しやすい「雨樋(とい)」の交換
  • 下地材やルーフィングの点検・補修

こうした工事に充てる方が、
住まいにとってよほど有益です。

まとめ:屋根塗装不要論

屋根リフォーム業界では「外壁と一緒に屋根も塗りましょう」と勧められることが多くあります。
しかし、少なくともスレート屋根に関しては、塗装は不要です。

  • 塗装で雨漏りは防げない
  • 耐久性向上にもならない
  • 美観目的ならOK
  • 費用は他のメンテナンスに回した方が有益

大切なのは「見た目ではなく、本当に家を守る部分に投資すること」。
屋根塗装の提案を受けた際には
「それは美観目的なのか? それとも耐久性のためなのか?」と一度立ち止まって考えてみてください。


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この記事を書いた人

成田 崇

  • 瓦ぶき2級技能士
  • 瓦屋根工事技士
  • 瓦屋根診断技士

【趣味】サーフィン・山登り・バックカントリースキー・読書・旅行

〇かわらぶき2級技能士とは?

瓦屋根工事に必要な知識と施工技術を備えていることを証する資格で、瓦職人にとって欠かせない国家資格です。 試験は学科試験と実技試験で構成されており、実技試験では実際に一文字軒瓦または万十軒瓦を使った瓦葺き作業を行い受験者の施工レベルを審査します。

〇瓦屋根工事技士とは?

国土交通大臣が認定する資格で屋根工事に従事する者として必要な瓦屋根についての適正な知識を備えていることを証する資格です。 この資格取得では屋根の施工に関する知識はもちろんのこと、建築に関わる知識、安全に関する知識、法規等、さまざまな知識が求められます。

〇瓦屋根診断技士とは?

国交省所管の公益法人(社)全日本瓦工事業連盟(全瓦連)が高い技術、技能を持つ工事技術者に対してのみ与える資格です。 この資格の取得条件はかわらぶき技能士と瓦屋根工事技士の両方の資格を備えた者となっており、国内の瓦屋根工事技術者における最上位資格といえます。